AI が SEO を壊しました。良くも悪くも。
20 年にわたり、Google と SEO 担当者は暗黙の協定のもとで動いていました。「私たちがウェブを整理するから、あなたがユーザーを送ってくれる」という協定です。しかし AI とアンサーエンジンの台頭はその協定を破り、クリックなしで成立するビジネスモデルを生み出し、業界全体をパニックに陥れました。
突然の喪失に直面した人と同じように、SEO 担当者やマーケターは今、「5 段階の悲しみ」を経験しています。否定、怒り、取引、落ち込み、そして受容です。
このガイドの目的は、その変化を冷静に受け入れるためのサポートをすることです。何が変わって何が変わっていないのかを整理し、2026 年も通用する戦略や戦術にエネルギーを集中できるようになることを目指します。
Google の AIによる概要(AI Overview)は、2024 年 5 月のリリース当初、世間の笑い者になりました。
AI が生成するテキストの要約は「ピザにのりを貼ることを推奨」するなど、荒唐無稽なハルシネーションを連発。コンセンサスは明確でした。「米国でのロールアウトは大失敗に終わる。ユーザーは嫌がり、Google は『強化版の強調スニペット』をすぐ廃止するだろう」と。

こうした否定の背景には、「Google は自社トラフィックを自ら食い荒らすことはしない」「AIによる概要を収益化できるはずがない」「ユーザーは 10 件の青リンクを恋しがるはずだ」という根強い信念がありました。
しかし SEO 担当者がピザとのりのネタで盛り上がっている間に、壁の文字を見逃していました。その 1 年前には、ChatGPT が月間アクティブユーザー 1 億人を突破した世界初のアプリになっていたのです。人々は実際に、複数のサイトをクリックして渡り歩くよりも即座の回答を好む——そのことがすでに証明されていました。
AIによる概要が単なる一時的な変動テストではなく、Google がグローバルに展開して Gemini 2.0 をエンジンとして採用したインフラ代替であることがわかってくると、怒りが積み重なっていきました。
そして恐れていた「クロコダイルチャート」が Google Search Console に現れたとき、怒りは一気に爆発しました。
SEO 担当者やマーケターはダッシュボードを前に愕然としました。インプレッションが急上昇し、クリック数が急落するグラフが、まるで口を開けたワニのような形を描いていたのです。

この「グレート・デカップリング(大分断)」は、2025 年 3 月のコアアップデート後の AIによる概要の大規模展開と完全に一致していました。一晩で AIによる概要の表示率がほぼ 2 倍になったのです。
当然の結果として、翌月にはAIによる概要によってトップ掲載ページへのクリック数が 34.5% 減少し、情報収集系のキーワードが最も大きな打撃を受けました。

2025 年 3 月のコアアップデートでは、さらなる変化も起きました。自動翻訳の導入です。
Google は海外検索トラフィックを組織的に吸い取り始めました。ネイティブ言語のコンテンツが不足しているクエリに対してページを翻訳し、そのトラフィックをサイトに送るのではなく、Google 独自のサブフォルダに掲載したのです。
つまり、サイトが完全にローカライズされていなければ、国際検索トラフィックをまるごと Google に献上しているも同然の状況に追い込まれたのです。
パブリッシャーは袋小路に追い込まれました。コンテンツを収集する AI クローラーをブロックすれば、検索結果から姿を消すリスクがある。そこで業界は訴訟やロビー活動で反撃に出ました。Google だけでなく、急速にユーザーを増やしているすべての AI チャットボットが標的となりました。
- OpenAI はニューヨーク・タイムズから、ChatGPT が数百万本の記事をスクレイピングしたとして訴えられました
- Anthropic は、Claude の学習データに LibGen などから不正入手した数百万冊の書籍が使われたとして、15 億ドルの訴訟を抱えました
- Google は、独占的地位を利用してパブリッシャーに AIによる概要へのコンテンツ提供を強制したとして、大規模な独占禁止法訴訟に直面しました
それでも、会話型 AI チャットボットはユーザーを増やし続けました。
追い詰められた SEO 担当者は、得意とすることに取り組みました。システムを過剰最適化することです。
クリック数が急落すると、ブランド言及が新しい可視性指標になりました。LLM がブランドを回答として引用するためのタッチポイントが多ければ多いほど有利になるからです。
こうした焦りは業界全体を新たなブラックハット SEO の時代へと引きずり込みました。今回のターゲットは、ブランドの AI 可視性に影響しうるあらゆるオンラインアセットです。
- 自社ブランドをトップにした「ベスト」リスティクル:自社ブランドを 1 位に掲載(当然ですが)
- サンドボックスサイトと偽の権威性:自社ブランドと競合他社を比較するマイクロサイトを立ち上げ、自社の「圧勝」を宣言する
- チャンク最適化:機械が読みやすくするために、複雑なコンテンツを思考のないブレットポイントの羅列に変える
- llms.txt という思い込み:AI クローラーへの指示としてサイトマップに llms.txt を追加する(Google のジョン・ミューラーさんによれば無視されている)
経験豊富な SEO 担当者の多くにとって、こうした戦術は最適化というより降伏に近く感じられました。
「ゼロクリック検索時代へようこそ。トラフィックはドアに預けてください」——Ahrefs のルイーズ・ラインハンが絶妙な表現で言い表したとおりです。
Google のクリックなしモデルは新しいものではありませんでした。SparkToro は 2024 年に、米国・欧州ともに全検索の約 60% がクリックなしで終わっていることを明らかにしていました。
さらなる打撃となったのは、AIによる概要が一夜でほぼ 2 倍に拡大したことです。Ahrefs の最新調査によれば、生成されるテキスト、引用 URL、言及ブランドという観点から、AIによる概要は 2 日ごとに変化しています。ブランド言及や AI からの引用は今後も不安定であることを覚悟しておきましょう。

指標についても、SEO 担当者は長年の帰属問題に悩まされています。Bing が Microsoft Copilot 向けの AI パフォーマンスレポートを導入した以外、AI プラットフォームはプロンプトや検索ボリュームを開示していません。従来の検索エンジンと異なり、アンサーエンジンは非決定論的です。同じ質問でも、毎回同じ結果が返ってくるとは限りません。
そのため、AI 検索において検索ボリュームはあまり意味を持ちません。新興の AI 可視化ツールが提供するボリューム数値はよくても方向性の参考程度であり、Ahrefs のツールも例外ではありません(とはいえ、実際のユーザーの実際のキーワードをもとにプロンプトを構築しています)。
それでも多くの CMO は、SEO チームに AI 可視化ツールを購入させ、自社ブランドを ChatGPT や AIによる概要に「魔法のように」登場させようとするでしょう。イーライ・シュワルツさんが指摘するように、これは SEO 担当者の仕事ではありません。ブランドへの需要を生み出すことに長けたブランドマーケターや PR チームの仕事です。
いずれにせよ、AI がウェブ上で最も言及されているブランド——たとえ偽物であっても——を優遇し続ける中、SEO 予算は侵食されていくでしょう。Ahrefs 自身がAI の誤情報実験を行ったところ……実際に機能しました。
SEO の悲しみの最終段階はどのようなものでしょうか。
新しい SEO 時代で重要なことをお伝えする前に、永久に変化したことを整理し(そして受け入れ)ておきましょう。
- 10 件の青リンクは戻ってきません。 これは設計上の問題です。AI 検索エンジンを使えば、特定のトピックや商品を深く調べたい場合を除き、複数のページをクリックして渡り歩く必要がなくなります。SERP の上部でパーソナライズされた ChatGPT 風の体験を提供する Google の AI モードを見れば、その意図は明らかです。
- 情報収集系キーワードからのトラフィックは減少しています。 1,000 文字の投資解説記事を読むより、AI が複数のソースから即座にまとめてくれる方がいいと思う人は増えています。旧来の SEO では、ファネル上部のコンテンツはユーザーをより購買意欲の高いページへ誘導するために存在していました。しかし、ゼロクリック検索と(Gemini 3 を搭載した)AIによる概要がパブリッシャーと Google 双方のトラフィックを侵食しつつある今、従来のファネルは永遠に壊れました。
ただし、こうした変化がすべて悪いニュースというわけではありません。
AEO (アンサーエンジン最適化)対策とは、AI 検索エンジンで自社ブランドが言及・引用されるように最適化することを指します。一方、SEO 対策は、Google の検索結果ページで自社サイトを上位表示させるための戦略です。どちらも市場で勝ち抜くために必須となるでしょう。自社の事業成長に貢献するには、SEO に加えて AEO にも注力する必要があります。では、AI 検索時代において重要な戦術を紹介します。
1. ファンアウトクエリが新しいキーワード
ChatGPT、Perplexity、Claude に質問すると、LLM は検索拡張生成(RAG)と呼ばれる仕組みを使います。
このプロセスは、Google や Bing などの従来の検索エンジンでリアルタイム検索を行い、そこから情報を引き出すというものです。
すでに「知っている」回答については自身の学習データを使いますが、新しい質問や細かいニュアンスを含む質問に遭遇すると、ファンアウトクエリと呼ばれる新興トピックを通じて、最新かつ最も関連性の高い情報をライブ検索します。
ファンアウトクエリは、トピカルクラスターの構成要素と捉えてください。LLM がどのようにファンアウトクエリを構築するかを理解し、重要なトピックやサブトピックをカバーするコンテンツを作れば、AI 検索に表示される可能性が高まります。
トラッキングするには、ブランドレーダーにアクセスし、ブランドの「AI の応答」を検索して「ファンアウトクエリ」列を確認してください。

2. ブランドこそ新たな参入障壁:マルチプラットフォームへ展開する
AI 検索では、AI との会話でのブランド言及や引用のほとんどは、自社コンテンツではなくサードパーティのウェブサイトから生まれます。
たとえば、AI の応答における Ahrefs ブランド言及のトップソースを見ると、ChatGPT では ahrefs.com が主要なソースとして引用されていませんでした。

AIによる概要では 7 位と健闘していましたが、それでもトップ 3 には届いていませんでした。

これは何を意味するのでしょうか。
SEO 担当者とマーケターには一夜にして新しい仕事が生まれました。ブランドの AI 可視性に影響しうる外部サイトにおけるブランド言及を、能動的にモニタリングすることです。
AI はもはや SEO 予算が最も大きい企業を優遇しません。動画、ポッドキャスト、PR、コミュニティフォーラム、さらには屋外広告(OOH)など、さまざまなオフサイトのタッチポイントにわたって最も強力なブランドストーリーを持つ企業を優遇します。
こうしたタッチポイントは常にブランドの健全性に不可欠でしたが、AI はそれらをファーストクラスのブランドシグナルに格上げしました。この考えは、Ahrefs ポッドキャストに登場したほとんどの CMO も認めています。

実際、Ahrefs の最新調査によれば、YouTube と Reddit は AI 検索で 2 番目と 3 番目に多く引用される情報源であることが明らかになっています。
つまり、SEO はジャーナリスト、インフルエンサー、ポッドキャスター、広告主、コミュニティモデレーターへのアプローチでブランド言及を獲得するため、ブランドチームや PR チームとより緊密に連携する必要があります。
Ahrefs のブランドレーダーでは、YouTube、TikTok、Reddit のインデックスを集約し、マルチプラットフォームのブランド言及をすでに追跡し始めることができます。

たとえば YouTube レポートでは、動画タイトル・説明文・タイムスタンプ付きの文字起こしからブランド言及を確認できます。温かいパートナーシップの可能性を探しているなら、ブランドが言及された分単位に直接ジャンプできます。

3. 流動的な AI 指標を追う
AEO(アンサーエンジン最適化)は静的な SEO KPI を根本から覆します。
アンサーエンジンは本質的に確率論的です。同じ質問をしても毎回異なる結果が返ってくることがあります。順位も固定されておらず、プロンプトの検索ボリュームも見えないブラックボックスの中で動いています。
ファンアウトクエリは非常に有用ですが、ロングテールで検索ボリュームが少ない質問であることが多く、一度も検索されたことのないユニークなものさえあります。あらゆるプロンプトを追いかけるという超ロングテールの罠には陥らないでください。
代わりに、次のことを実践しましょう。
(a)集計プロンプトトラッキングを活用する
データを平準化することで、自社がどれだけ市場を押さえているかが明確に見えてきます。ブランドレーダーでは保存済みレポートにタグを付けられるため、幅広いトピックやテーマにわたる AI 可視性を簡単に追跡できます。

(b)AI シェア・オブ・ボイス(SOV)を追う
非決定論的な AI の回答でも、AI 市場シェアのトラッキングをあきらめる必要はありません。
秘訣は、数千件のプロンプトにわたる相対的な市場シェアを、同じ競合他社と比較しながら一貫して追うことです。
「このクエリでブランドが表示されたか?」という問いを立てるのはやめましょう。
より良い問いはこうです。「数千件のプロンプト全体を通じて、AI はどのくらいの頻度で自社ブランドをこのトピックやカテゴリと結びつけているか?」
これを確認するには、ブランドレーダーにブランドを入力し、競合を追加したうえで、Ahrefs の 2 億 5,000 万件以上の検索ベースのプロンプトにおける「AI シェアオブボイスの割合」を確認してください。後でモニタリングできるようレポートを保存しておきましょう。

4. SEO はもはやゼロサムゲームではない
以前は、検索順位を上げることは誰かと入れ替わることを意味していました。
しかし AI の登場により、人々がすべてのプラットフォームで以前より多く検索するようになっているため、検索市場そのものが拡大しています。Adobe の 2025 年調査がこれを裏付けています。米国回答者の 3 人に 1 人が、従来の検索エンジンよりも ChatGPT を信頼しており、36% が ChatGPT を通じて新しい製品やブランドを発見しています。
つまり、「検索パイ」は縮んでいません。むしろ大きくなっています。
従来の検索順位の低下を嘆くのをやめればやめるほど、早くこの AI 主導の新しい需要から自社のシェアを獲得できます。
世界的なトラフィックシフトに関心があれば、7 万件以上のウェブサイトのトラフィックを分析する chatgpt-vs-google.com ダッシュボードをぜひご覧ください。このダッシュボードによれば、AI トラフィックは 2025 年 7 月に過去最高を記録しましたが、2026 年 1 月時点では回復傾向にあります。

AEO、GEO、それとも LLMO と呼び方は何であれ、行き着くところは同じです。AI 検索は SEO の上に重なるレイヤーだということです。
両者には大きな重なりがあります。クロール可能性、サイト構造、高品質なコンテンツなど、SEO の基本的なベストプラクティスは引き続き有効です。従来のウェブの可視性は、AI 検索における RAG プロセスに大きな影響を与えるからです。
ただし、実行面のニュアンスは変化しました。今は 2 つのゲームを同時にプレイしなければなりません。コンテンツが実際に見つかり取得されるようにするための従来の SEO と、自分のニッチで「この答えならこのブランド」と認識されるために必要なオフサイトのブランド権威を構築するための AEO です。
古い SEO の世界を失う悲しみは本物です。しかし受容の段階に達したとき、新しいゲームはアンサーエンジンと戦うことではないと気づくでしょう。
あらゆる場所で確実に発見されるブランドになることです。

Ahrefs をもっと活用 👉
▶︎ Ahrefs 公式ブログ — 本社発信の記事
▶︎ Ahrefs Canny — 開発チームへ意見を送る
▶︎ X 公式アカウント— 最新情報をリアルタイムで
▶︎ YouTube 公式チャンネル— 動画コンテンツをチェック
▶︎ Ahrefs note — 日本チーム発信の記事